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js-STARの教科書 XR+対応版 #02 〜1.js-STARの導入(1) js-STARとは

第1章では、js-STARの概要から用意する方法について紹介します。js-STARでもっとも多くの機能が利用できるブラウザ版を中心に、必要最小限な知識と注意点について解説します。
まず、js-STARがいつでも利用できる環境を整えましょう。

1.1 js-STARとは

js-STARは統計分析プログラムの愛称です(STatistical Analysis Rescuers:統計分析救護員)。STARの開発は、MSX版に始まりN88Basic版などのさまざまなバージョンを経て、現在のJavaScript版のjs-STARに至っています。
js-STARの最初の公開から、すでに20年以上が過ぎ、現在(2023年3月14日現在)のバージョンはXR+ 1.6.0です。XRとは、js-STARが開発当初から数えてバージョン10に当たること(Xはローマ数字で10)と、Rとの連携が強化されたこと(Rとのかけ算)の2つの意味があります。
単独での利用だけでなく、表計算ソフトや統計分析ソフトRなど、いろいろなソフトウエアとの連携し高度な統計処理も可能です。Web環境の変化とともに進化し続け、多くの学生や研究者から利用されています。

■豊富な分析プログラムとユーティリティ
度数の検定
t検定分散分析多変量解析の分析プログラムに加えて、データの処理を支援するユーティリティ、統計についての理解を深めるシミュレーションが充実しています。

<度数の分析>
直接確率計算(1×2表、2×2表)、カイ二乗検定(1×J表、i×J表)のほかに層化解析(2×2×K表)、3元モデル選択(i×J×K表)、4元モデル選択(i×J×K×L表)、自動評価判定1×2(グレード付与)自動集計検定2×2(連関の探索)、対応のある度数の検定(マクネマー検定、Q検定)のプログラムを用意しています。
カイ二乗検定では結果が有意であった場合に、自動的に残差分析を実行します(その有意性に貢献したセルを割り出します)。層化解析(2×2×k表)、3元モデル選択(i×J×K表)、4元モデル(i×J×K×L表)は、主にRプログラムを利用します。

<t検定>
対応のないt検定(参加者間)と対応のあるt検定(参加者内)のプログラムを用意しています。t検定(参加者間)は、Welchのt検定です。また、ノンパラメトリック検定のマン・ホイットニーU検定とメディアン検定の結果も同時に出力します。t検定(参加者内)は、ノンパラメトリック検定のウィルコクソン符号化順位検定を同時に出力します。

<分散分析>
3要因までの分散分析のプログラムを用意しています。各条件のデータ数が等しくない場合に重みづけをしない平均を用いて分析します。最大の特徴として、交互作用が有意なとき自動的に単純主効果検定を実行し、さらにその結果に応じて多重比較を実行します。
●実装している多重比較法
・LSD法(最小有意差法)
・Tukey-kramer法(HSD法)・・参加者間計画のみ
・Bonferroni法
・Holm法

<多変量解析>
相関係数の計算と検定、回帰分析、因子分析、クラスタ分析、SEM(共分散構造分析)、尺度開発/項目分析(α係数ほか)のプログラムを用意しています。
相関係数の計算と検定は、相関係数(correlation coefficient)を計算します。多変数の場合は相関マトリクス表を作成します。順位相関計算は、順位相関係数(rank correlation coefficient)を計算します。散布図を描いてみて曲線相関が予想されるようなときに使用します。
回帰分析、因子分析、クラスタ分析は、主にRプログラムを利用します。

<ノンパラメトリック検定>
メディアン検定、マン・ホイットニーU検定、クラスカル・ウォリス検定、サイン検定(2水準の対応データ)、Q検定(3水準以上の対応データ)、ウィルコクソン符号化順位検定のプログラムを用意しています。

<ユーティリティ>
集められたデータは、すぐに分析プログラムに使えるとは限りません。まず、それらのデータを適切に処理する必要があります。
js-STARでは、分析プログラムだけでなく、データを処理するための支援プログラム(ユーティリティ)が充実しています。表計算ソフトなどを利用しても同じことができますが、数式などの専門的な知識や技能が必要ないので、だれでも簡単に利用できます。
乱数発生、階級化集計、数値変換(角変換・対数変換 etc.)、逆転項目処理、欠損値処理、スペース・タブ変換、度数集計 / 基本統計量、データマージ(対応づけ)、クロス集計i×J、無作為抽出、行列入れ替え、Rパッケージインストールのプログラムを用意しています。

<シミュレーション>
ユーザーが様々な条件を試すことを通して、統計の理解を深めることができます。乱数を発生させる機能やユーザーが図を操作するとそれに伴って様々な統計量が変化するメニューがあります。
1×2表(二項検定 / BF分析)、1×J表(カイ二乗検定)、平均と標準偏差、t検定・As(参加者間)、ABs(2要因参加者間)、相関係数計算があります。

■js-STARの種類と実行環境
js-STARは大きく分けてブラウザ版とアプリ版とスマホ版があります。本書では、一番機能の多いブラウザ版を中心に説明します。

<ブラウザ版>
ブラウザ版はすべての分析プログラムを使用できます。主にコンピューターでの利用を想定していますが、スマートフォンやタブレットでも利用可能です。推奨ブラウザは、Google Chrome です。最新版を利用してください。
動作を確認しているOSは、WindowsおよびmacOSです。
動作確認を行っているブラウザは、Google Chromeの他に、Firefox、Safari、Edgeです。(リンク

<アプリ版>
iPhone用のアプリ
です。1×2表(正確二項検定)、1×2表:母比率不等、2×2表、カイ二乗検定の4つの度数の検定プログラムを使用できます。
動作確認はiOS15で行っています。アプリ版の詳しい説明は、アプリ版の極意を参考にしてください。(リンク

<スマホ版>
スマホ版は、ブラウザ版とアプリ版の中間です。スマートフォンのブラウザで快適に利用できるインターフェースになっています。スマホ版はアプリ版と同様に、1×2表(正確二項検定)、1×2表:母比率不等、2×2表、カイ二乗検定の4つの度数の検定プログラムを使用できます。スマートフォンでの利用を想定していますが、タブレットでも利用可能です。(リンク

#jsSTAR #フリーソフト #統計 #データ分析

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